私の恋の話 2/29
私は彼に一瞬で射抜かれた
言葉にならない輝きがそこにあった
…と綴っているが
出会った当初はただの「かっこいい先輩」だった
部活に行くのが楽しみになる理由の一つだった
高校生ってほんと単純で
「先輩かっこいい」だけで小さな歓声を上げられる
私もその一人で
太鼓を打つ姿、篠笛を吹く姿
所作、声、姿勢、何もかもを推せた
2人きりではあんまり話せなくて
部員の男の子を挟んで会話したり
業務的なことをなるべく引き延ばして質問したり
会話を交わすだけで心が躍るから
「次はどうやって声を掛けたら話せるかな」なんて
可愛らしいことをよく考えていた
憧れの人がいるだけで
こんなに努力って楽しいんだって思えた
そんな純情で綺麗な憧れを抱いていた16歳
5年後に起こることなんて予想だにせずに。